野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

生き延びる道を先人に学ぶ?

やっと読み終わったぞ、「文明崩壊」。

文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)

文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)


上巻では、滅亡してしまった社会のいくつかの事例について検討した。それらに共通してあるのは、実は何らかの「環境破壊」だった。破壊の種類は様々である。森林の乱伐、ある種の動物ないしは植物の乱獲、あるいは外来種の導入、有害物質の拡散… 等々。しかしいずれにしても、彼らが暮らす環境に対して回復不能なダメージを与えることによって、その社会を成り立たせるに必要な資源を取り出せなくなってしまう、あるいは、生身の人間が生きていくことがかなわないほどに苛酷なものにしてしまった、という点で共通している。
さてこれらの事例は、過去の無知蒙昧な人々による愚かな過ちであり、高度に科学技術の発達した現代に生きる我々には無縁の話である。というわけではないのだ。まったくそんなことはない。実は我々も、彼らと同様にカタストロフィに向かってけっこうな勢いで突き進んで行っているのだ。いやむしろ事態はもっと悪いようだ。高度に発達した科学技術のおかげで、環境破壊のスピードは上がり、グローバル化によって影響範囲や程度は桁違いに大きくなっている。
というわけで、この下巻に書かれているのはまことに気の滅入るような未来予測ばかりである。が、カタストロフィを回避できる可能性はゼロではない。決して簡単な話ではないが、不可能というわけでもない。ダイアモンド氏の言うところの「慎重な楽観主義」が必要だ。幸いにして我々は「歴史」を知っている。その気になれば、不都合な真実から目を背けず、歴史に学ぶこともできるのだ。