野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

絶賛しときます

以前、新書で超ひも理論の「入門書」を読んでみたことがあるが、そんなもんではさっぱり理解できないのだ。それだけ超ひも理論っていうのは難解だ。その本もはっきり言って、わかりやすく説明しているつもりなのかしらんが、どういうレベルの読者を想定しているのかさえわからないような、独善的な説明でずいぶんイライラしたものだ。そして今回読んだのは、「エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する」だ。

エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する

エレガントな宇宙―超ひも理論がすべてを解明する


500ページにおよぶ大作だが、きわめて丁寧に、上手なたとえを使って非常にわかりやすく書かれている。もちろんこれを読んだからといって超ひも理論が理解できるわけではない。何だかんだ言って相対性理論やら量子論やら素粒子論に関する知識が前提で、そして高等な数学を駆使してはじめてちゃんと理解できるような内容だと思う。それでも、おおもとのところの基本的な考え方みたいなものは、なんとなくつかめるような気はする。最初の3分の1ほどは、相対性理論量子論に関する説明に割かれている。それらがベースになるのだからしかたがない。いや、相対論や量子論について、こんなにわかりやすくエッセンスを説明した本は今まで読んだことが無い。それだけでもこの本はずいぶんと値打ちがあるんじゃないだろうか。
それにしても、時空のスケールが、途方も無く小さいところと大きいところを行ったり来たりで、頭が振り回されて、ちょっと酔ったような感じになってしまう。その上に、プランク長を境にある長さとその逆数は同じ物理的特性になる、とか我々の住む時空は11次元だ、とか、正気を保つのに少々努力を必要とするような内容だ。しかし、「そんなアホな」というような内容が実は既存の諸々の理論をお互いに矛盾の無いように統合し、すべてを説明し得る美しい理論になるという。もうここまでくると、残念ながら私ごとき凡人の理解の範囲を超えている。
いずれにせよ、これは名著だと思う(翻訳の質も良い)。新書やらマンガの解説書を読むよりずっと良い。書かれていることをすべてを理解するのはおそらく無理だが、読んでみる価値は十分にある。ほんの1割でも良い、それだけでも理解できれば、得られるものはずいぶんと大きいはずだ。