野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

メイド喫茶潜入レポート

英語教師リチャードはイングランド出身だが、日本のオタク文化に造詣が深い。先日彼と話している際に、「メイド喫茶」の話題となった。当然ながら彼はあちこちのメイド喫茶に行った事がある。わたくし自身はといえば、一度メイド「風」カフェに行った事がある程度(2006年4月9日のエントリを参照されたい)。正統派のメイド喫茶にぜひ一度行ってみるべきである、コーヒーもうまいし、と慫慂するので、ではたとえば日本橋界隈ではどこがオススメなのか、と問うてみたところ、2件ほどを紹介してくれた。場所は「なんさん通り」から1〜2ブロック南へ下りたあたり(ここの南北の通りは、「ヲタロード」と呼ばれるらしい。知らなかった… しかし、「さもありなん」だ)。そのうちの1軒、「カフェモエモエ」(なんちゅう名前…)に行ってみることにした。何と言っても禁煙らしいし。
「Yellow Submarine」の南にあるブロックで、雑居ビルの5F、という情報だけをもとに、ヲタロード周辺を歩き回ってみたが、「カフェモエモエ」なんていう名前の店は無い。うーむこれは、と思ったが、そのあたりでとにかくビルの5Fにある店に入ってみることにした。一応そこもメイド喫茶なのだ。
エレベータで5Fにあがると、そこはすぐ店の入り口になっていた。そして、2人ほどの女の子がいて、「お帰りなさいませご主人様」と迎えてくれた。しかし、その「お帰りなさいませ」にどうも照れがあるのだ。うーむ、それはいかんよ。こっちまで恥ずかしくなるじゃないか。
んでまあ、とりあえず店内に入って席に着いたわけだが、待てど暮らせど注文を取りにこない。かと言ってメイドたちが忙しくて手が回らないわけではなく、店内には5〜6人ほどもメイド達がいるのだ。そして隅の方では、新米と思しきメイドに、先輩メイドがなにやら説明をしている。かなりイラついたところで、客席の奥の方から、ベルの音がした。そう、各テーブルにはハンドベルが置いてあり、どうやら注文をする際などメイドに用事があれば、そのベルを使う、というシステムらしい。そんなアホなことをせんとアカンのか、と思ったところにメイドが注文をとりにやってきた。あれ、ベルを鳴らしたのは奥のほうの席では?と思いつつも、こちらとしてもさっさと注文したかったので、コーヒーを頼んだ。で、その後ちょっと様子を見ていると、どうも彼女ら、どのテーブルでベルが鳴ったのか、ということをさっぱり把握してないのだ。ベルの音を聞いて「ただ今お伺いいたします」(だったかな?)かなんか言って、客席エリアに入ってくる際に一礼。だけど、どこのテーブルかわからない。アホか。それから、店内を走るな!それはあかんやろ、と思いながらコーヒーが来るのを待っていた。やっとコーヒーが運ばれてきて、「こちらコーヒーになっております」というのに軽くイラついた。そして、
「お砂糖とミルクをお入れしまし」「要りません」
というやりとりのあと、やっとコーヒーにありつけた。これがなんと、ソーサーとカップがハート型なのだ。それに追い打ちをかけるように、コーヒーそのものが全然ウマくなかった。
ひょっとすると僕は何か間違っているかもしれない。メイド喫茶に来たからには、メイドの女の子たちとの会話を楽しみ、デザートを注文して、それに彼女らによる飾り付けがされるのを楽しむべきだったのだろう。だけど、「お前ら接客業をナメてるんと違うんか?」というのが正直な感想だ。メイド喫茶云々という以前に、喫茶店としての基本的なところが成り立ってなかったら、そこに「メイド喫茶」としての付加価値を提供することはままならないんではないのか?
そんなことを思いながら、相当に険しい顔をしていたのか、あるいはそういうオーラを発散していたのか、メイドの一人がおそるおそるやってきて、「あのう、すみません。チャージ料は要りませんので、カウンター席の方に移っていただけませんか?」と言った(生意気にもこの店は500円のチャージなんぞを取りやがるのだ)。どういう事情でそんなことを言いだしたのかはわからない。単に店内が込み始めたからなのか、あるいは、店に入ってすぐのところにもんのすごく険悪な雰囲気で座っているオッサンが居るのが、店の営業上好ましからぬ影響を与えると判断したのか。
いずれにせよ、もうコーヒーは飲み終わっていたので、店を出ることにした。すでにそのテーブル席でコーヒー一杯飲んでいたのだから、先方がカウンターに移動してほしいのでチャージは不要、と言われたとしても支払うのが筋かとは思う。しかし、その「チャージ料」に相当する価値をまったく見いだせなかったので、その申し出はありがたく受けることにして、コーヒー代500円也だけを支払った。
後日、件の店についてネットで検索などしてみた。その筋の人達は、あんなんでもそれなりに楽しめるのだろうか、と思ったが、やはり評判は芳しくない。昨年の10月にオープンしたようだが、今年の1月末で閉店、ということになっていたらしい。それが閉店というのを撤回し、リニューアルオープンしたとか。しかしあの体たらくでは、あとひと月保つかどうか、かなり疑わしい。
しっかりしてくれよ、リチャード。