野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

誰がナイトスクープを殺したか?

最近は、ほとんどTVを見ない。それでも以前は、朝日放送の「探偵!ナイトスクープ」だけは、わざわざ録画して見ていたものだが、録画したまま見ずに放置したものが何ヶ月分もたまるようになってきたので、いつ頃からか録画すらしなくなってしまった。金曜日の夜、家に居て気が向いたときだけ、リアルタイムで見るだけだ。
3月2日の夜はたまたま家に居たので、久々にナイトスクープを見た。いつものように、視聴者からの依頼に応えて調査をする、という内容だ。その中の3本目は小学生の女の子からの依頼で、「『巨人の星』で、星飛雄馬が家の中からボールを投げ、壁の穴を抜けて外の樹に当たり、そのまま跳ね返ってきて出た時と同じ壁の穴を抜けて家の中に戻ってくるシーンを再現してほしい」というものだった。そう、「巨人の星」を見た事のある人なら大抵知っている、あの有名なシーンだ。これを担当した探偵は、カンニング竹山だった。
アニメと同じ間取りの家が用意され、壁に穴があけられて、竹山探偵はひたすらボールを投げた。そのうちの1個が、偶然にも穴をすり抜け、外に出て行った。大成功!ということで調査は終了。
ちょっと待てよ、それで終わりかよ。確かに依頼文には、「ボールが跳ね返って家の中に戻ってくるところまでは再現しなくとも良い」と書いてあった。しかし、せめて壁から抜けたボールが、外の樹に当たるところまでは再現しようとするべきじゃないのか?
いやもちろん、それが極めて難しい、あるいはひょっとすると実現不可能なことなのかもしれないことは承知している。しかし、だったら壁を抜けて終わりにしても良いということではないはずだ。飛雄馬、壁の穴、および外の樹のそれぞれの位置関係を仮定したうえで、必要な投球角度、初速度、等々を科学的に解析し、それを実現しようとする(あるいは、これは生身の人間では無理だ、という結論を導き出す)べきではないか?もちろん、これらはさんざん試行錯誤をしてたあげく、どうにもうまくいかない、どうしよう、という状態になって、どこぞの先生に相談に行く、というナイトスクープの王道パターンに沿って行うのが望ましいことは言うまでもない。
とにかく、竹山探偵の調査においては、

  1. 依頼の内容を都合の良いように解釈し、低すぎる目標達成レベルを設定している。
  2. とにかく闇雲に行ってみた結果をそのまま垂れ流しているだけで、何の科学的な裏付けも、考察もなされていない。

という2点において、著しく質の低い内容であったと言わざるを得ない。
もっと問題なのは、この調査内容に対して何らの疑義も差し挟まなかった西田局長だ。これが前局長・上岡龍太郎であれば、「壁は抜けたけど、樹に当たってへんやないか」との突っ込みを入れたに違いない。「複雑に入り組んだ現代社会に鋭いメスを入れ、様々な謎や疑問を徹底的に究明する」のが「探偵!ナイトスクープ」であり、そのビジョンを探偵に徹底させるのが局長の仕事だ。感動ネタで泣いてりゃ良いってもんではないのだ。
やはり、上岡局長が降りた時点でナイトスクープは終わっていたのかもしれんな。