野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

ベストセラーはダテじゃない

「生物と無生物のあいだ」って、売れてるらしい。複雑系や生命科学というお題の本は、どうも気になって読んでみたくなる。

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)


タイトルどおり、とりあえずテーマは「生命とは何か?」。
自己複製しうるものが生命であると一般的には定義されている。では、自己複製してどんどん増殖するウイルスは生物と呼べるのか?答えはNoだ。生命とは、動的平衡(ダイナミック・イクイリブリアム)にある流れである。というのが、著者の主張であり、本書の主な内容だ。
上記の内容は、ていねいに、とてもわかりやすく書かれている。でもこの本の面白いのは、それに加えて、世の中の科学者・研究者の「生態」とでもいうものを、書いていることじゃないだろうか。
分子生物学にブレイクスルーをもたらしたワトソンとクリック、オズワルド・エイブリー、ロザリンド・フランクリン、モーリス・ウィルキンズ、キャリー・マリス、etc. といった面々に関する諸々のエピソード、著者自身が体験した、アメリカの大学や研究機関でポストドクターとして働く事、他の研究者との競争、そして具体的な実験の手順まで。
それにしてもこの人は文章がうまいなあと思う。専門は分子生物学なのに。
世の中にはこういう人もいるんだよなあ。