野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

重いから持ち歩きが大変

「女性は子供を産む機械」と発言して、最後には辞任してしまった大臣がいた。この発言は、女性の人格を否定する等々と各方面から非難された。その是非についてここで述べるつもりは無いが、「なんでわざわざそんな喩えをするのかわからん」というのが単純な感想だ。比喩というのは、話をわかりやすくするために使うものだろう。上記の発言がなされた文脈において、女性を「産む機械」に喩えても、特別に話がわかりやすくなったとは、どうしても思えないのだ。まず単純に「センス悪いな」と思ったものだった。
今を去ること30年前、「産む機械」どころか、「生物の個体は自らのコピーを増やそうとする利己的な遺伝子の乗り物(ヴィークル)に過ぎない」と主張した生物学者がいた。彼がリチャード・ドーキンスであり、その著書が、今や古典的名著とも言われる「利己的な遺伝子」だ。

利己的な遺伝子 <増補新装版>

利己的な遺伝子 <増補新装版>


有名な本だから、聞いたことはある。いつか読んでみなければ、と思っていた。今回読んだのは、初刷30年目を記念して、ドーキンス自身による序文などが追加された<増補新装版>だ。「エコノミスト」評によれば、

この重要な本は、これ以上まずありえないほど面白い

のだそうだ。さすがにそれはちょっと言い過ぎだと思う。でも確かに面白い。生物の個体は、自分自身を犠牲にして、群のために、あるいは種全体の利益のために「利他的」な行動をする例が多く知られている。それらの行動は遺伝子によりプログラムされたものであり、そのプログラムは利己的な遺伝子のコピーをより多く残すようになっている、と考えることで説明される。利己的な遺伝子たちは生物の個体を乗り物として、より多くの自分自身のコピーを残すようお互いに闘っている。だいたいそんな話だ。
以前読んだ「自我の起原」や「自己組織化と進化の論理」より先にこの本は読んでおくべきだったのだろう。まあしかたがない、これらの本はまたそのうち読み返すとしよう。