野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

冗談ばっかり

ああもう今日で連休も終わりか。

学生時代に「ファインマン物理学」を読んで以来、ファインマンの自伝も読んでみなければと思いつつ十数年が経過したわけだ。今回、かねてから懸案の「ご冗談でしょう、ファインマンさん」をついに読むことになったきっかけは、実は「臨死体験」だ。あの本には、外部の光や音を完全に遮断し、人間の体温と同じ液体が満たされたカプセル(メディテーション・カプセルとかリラクゼーション・カプセルとかいうらしい)に著者の立花隆さんが実際に入ってみる、という話が出てくる。そこに、物理学者のファインマンも同じカプセルを体験しており、そのときの様子が「ご冗談でしょう」に述べられている、とあったのだ。それが下巻の「変えられた精神状態」という章だ。

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)


ファインマン自身は臨死体験というより幻覚に対して非常に強い興味を持っていたらしい。いずれにしてもこの人は本当にあらゆることに対する好奇心のかたまりだ。もともと絵を描く才能はまったく無いと思いながらも画家の友人にデッサンを習い始め、なぜだか描いた絵が売れるようになり、ついには個展まで開いてしまう、とか、娯楽の無いロスアラモスでなんとなく叩き始めたドラムは、サンフランシスコのバレエ団の伴奏に使われるまでになってしまう、などなど。
しかしなんといっても、訳者の大貫さんがあとがきに書かれている「ひょうひょうとして天衣無縫だが、偽善や空威張りと見ると決して容赦しない」という表現が、実にうまくファインマン先生のキャラクタを言い表しているのではないだろうか。そして僕なんかはそういうところに、すごくシンパシーを覚えるのだな。