こんなことが日々、というか常に、ただいま現在も、自分の体の中で行われ続けているというのは驚異的というほか無い。「タンパク質の一生」を読むとそう思う。
- 作者: 永田和宏
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2008/06/20
- メディア: 新書
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えぇ〜ホンマかいな、といいたくなるほど、我々の体というか細胞っていうのは精妙なシステムのうえで絶妙なバランスを保ちつつ巧妙に働き続けているのだ。ポリペプチドの長いヒモは正しく折り畳まれないと、様々のトラブルを引き起こす。そんなもん、組成は一緒やねんから細かいこと言うなや、てなもんだがなかなかそう言う訳にはいかないらしい。まったく難儀なことだ。
それにしても面白いのは、「シャペロン」の話だ。ポリペプチドが正しく折り畳まれる(フォールディング)されるのをサポートするだけの分子。その存在は割と最近まで知られていなかったのだが、J・エリスなる学者がそのコンセプトを提唱し、「シャペロン」という名前をつけたのだとか。シャペロンというのはフランス語で「介添え役」、特に「社交界にデビューする若いレディに、ドレスを着せ、舞踏会場まで連れて行き、自分は控え室で待機している」という女性を指す言葉なのだそうだ。ポリペプチドが正しくフォールディングされ、「一人前」のタンパク質になるのを補助する分子をエリスが「シャペロン」と名付けたことにより、細胞内で起こっている似たような作用がすっきりと整理され、理解されるようになり、一気に研究がすすんだというのだ。まさに、名前をつけるとは、「呪」(しゅ)で縛ることなのだ。
まあこの場合は縛る、っていうのとはちょっと違うかも、だけどね。でも何かが理解できるようになったっていうのはある意味、その対象を「理解できる範囲に縛り付けた」ってことじゃござんせんか。どうでしょ、なんとなく直観的にそう思うのよ。あんまり自信無いけど。