野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

噺家は顔が命

ついに第10回を数える「ゆきち亭寄席」、残念ながら今回で最終回とのことだ。あの茨木クリエイトセンター和室のこぢんまりとしたところでやる寄席が好きだったのだけどな。昨年の12月もそうだったのだが、今回も生のお囃子つき。ということで、いわゆる「はめもん」つきのネタを含めて以下のラインアップとなった。

特別ゲストの桂紅雀さんは枝雀師の最後の弟子にあたるのだとか。この人も動きが派手で顔が面白い。「不動坊」は米朝師のCDで聴いたが、あれとはまた違って、寄席で生で見られるからこその面白さがある。利吉が風呂でひとり妄想にふける様子、徳さんを始めとする長屋のやもめ3人が利吉を怖がらそうと画策しながらスカタンなことばかりしている様子、など腹を抱えて笑ってしまう。米朝バージョンのサゲは「幽霊(遊芸)稼ぎ人でございます」というやつだったが、今どき「遊芸稼ぎ人」なんて言ったって通じるわけがない。ということで、「さっきまで宙に吊られておりました」というのに変えられていた。
そして歌之助さんの「宿屋仇」、これもまた米朝師匠のCDで聴いているのだが、ぜひ生で聴いてみたかったネタだ。宿屋の番頭・伊八に渡した金はなぜか二朱ではなく一朱になっていた。いきなり半額か。まあそんな細かいことはどうでも良い。「佐々木裁き」もそうだが、歌之助さんの侍はやっぱりうまいと思う。あの「夜前は泉州岸和田、岡部美濃守殿お城下において、浪花屋といえる間狭な宿へ泊り合わせしところ、何が雑魚も盲象も一つに寝かしおって、巡礼が詠歌をあげるやら、六部が経を読むやら、駆落ち者がいちゃいちゃ申すやら、相撲取りが歯ぎしりをかむやら、夜通し一目も寝かしおらなんだ」というセリフが良い。一方で、あえて難を言えば、兵庫の若い三人がどうもちょっと品が良過ぎる。米朝バージョンではいかにもやんちゃで、柄の悪そうな感じだったので、どうしてもそれと比べてしまうのだな。いやまそれでも、しっかりと笑かしてもらいましたけど。
そして今回は抽選会があり、なんとわたくし一等賞が当たり歌之助さんの色紙をいただいてしまった。記念すべきゆきち亭寄席の最終回に、このように結構なものをいただいて、かたじけのうござる。