野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

裏返さず一気に

デヴィッド・シルヴィアンのソロ2作目、"Gone to Earth" は、オリジナル版が1986年のリリース。LP2枚組だったので、ジャマくさがりのわたくしは、カセットにコピーして聴いていた。
時代はうつり、CD全盛になって、このアルバムもCDで再発されたのだが、CD一枚に収めるために数曲(なぜかタイトルの長い曲ばかり)をカットされていた。何たる暴挙か。割と最近になってオリジナルLPの全曲、さらにボーナストラックとしてリミックス3曲を加えたCDがリリースされたようだ。
レコードやカセットを聴かなくなって久しい。したがって自動的に、最近はこのアルバムも聴くことがなくなった。iTunes Storeでなんとなく試聴して、非常に懐かしく感じるとともに、うーむやっぱり名盤だなと改めて思った。で、やっぱりちゃんと聴きたくてダウンロード購入したわけだ。
iTunes Storeでも両方のバージョンがダウンロードできる。そりゃもちろん200円高い全曲入りバージョンのほうを買うだろう。実はAmazonでは全曲入りバージョンのUS輸入盤が値下がりしており、iTunes Storeよりも安くCDが変えるということにさっき気づいたが、まあそういうのはもう気にしないことにしよう。

Gone to Earth (W/CD)

Gone to Earth (W/CD)


路線としては前作 "Brilliant Trees" と同じだが、全体に少しカラフルになったような気がする。アルバムのサウンド作りにおいて、前作ではホルガー・シューカイとジョン・ハッセルの影響が大きかったと思う。そして本作ではロバート・フリップが大活躍なのだが、それでもベースになる部分の雰囲気としてはやっぱりシルヴィアン、というのがすごい。やはりスティーヴ・ジャンセンによる独特のリズムが効いているというのも大きいのだろう。相変わらず陰鬱な曲調で、映像的にはモノクロの荒野なのだけど。そして、そこはかとなくオリエンタルなテイストが隠し味的に利いている。
1993年にリリースされたロバート・フリップとの共作 "The First Day" を初めて聴いたときには、それまでのシルヴィアンの世界とはまた違ったテイストに驚いたものだ。だが改めてこのアルバムを聴き直してみれば、確かに後のシルヴィアン&フリップの世界につながるものの予兆がそこかしこに感じ取られる。
それにしても便利な世の中になったものだ。村上春樹さんはビル・エヴァンズの "Waltz for Debby" について「片面三曲でひと区切りをつけて、針をあげて、物理的にほっとひとつ息をついて、それで本来の『ワルツ・フォー・デビー』という作品になる」と書いている。つまり、CDではなく、LPで体を使って聴くのが好きだ、と。どうも僕は根が横着なのでそういう楽しみ方ができない。なので昔から、LPを買ったらまずはカセットにコピーして、普段はそれを聴いていた、今なら、CDを買ったらまずはiTuensでキャプチャ、みたいなもんですな。