野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

鷲田せんせいとの対談も付いてお徳でっせ

うああ、もう11月かあ。
さて、最近話題の(かどうか知らんけど)「移行期的混乱」を読んでみた。昨日の朝日新聞の書評欄にも写真入りで紹介されてましたな。なんでもあれでAmazonのランキングが急上昇したらしい。なんだかんだ言って新聞の影響力ってたいしたもんだ。

移行期的混乱―経済成長神話の終わり

移行期的混乱―経済成長神話の終わり


昨年読んだ「経済成長という病」をさらに発展させたような内容、かな。言われてしまえば、そんなのはあったりまえだろう、というような話でもある。人間には寿命がある。生まれてから100年かそれぐらいすれば、だいたい誰でも年取って死んでしまう。これは企業でも国家でも、タイムスケールの違いこそあれ、同じことだ。永久に成長し続けるなんてあり得ない。なのだけど、それを忘れてしまっているのか、気づかないふりをしているのか、あるいは本当に気づいてないのか。
少子高齢化も格差の拡大も、みんなこれまでの経済成長の「結果」である。これらを問題ととらえて、その対処法を、これまでのような経済成長を前提として、今までの延長線上で考えてもあきまへんで、とだいたいそんなようなお話。そりゃもちろん、まだ今後も経済成長がどんどんと続いていくのならそれに越したことはない。でも冷静に考えるととてもそうは見えないよ、というのを各種の統計数字等に基づいてリアルかつクールに分析している。
これからはゼロ成長の時代になるだろう。そんな時にどうすれば機嫌良く暮らしていけるのかを考えた方が良いんじゃないのか、という問いを投げかけているわけね。答えはまだ無い。無いけど、それを考えるには、まず現状を正しく認識しないと。
とてもていねいに書かれていて、読みやすい。本当に、一部の人を除いて、こんなに自明のことであるかのように思えること(それは平川氏がうまく書いているからかもしれないけど)を、なぜ誰も言わないのだろう。良い本だと思いますです。