以前「戦争の世紀を超えて」を読んだときに、森達也氏の、あまりにわかりやすいものの見方に対する忌避、みたいなものにちょっと驚いて妙に興味を覚えた。で、あのオウム真理教のドキュメンタリー映画を作ったときのメイキング本とでもいうべき「A」の文庫を見つけたので即買いしてしまった。
- 作者: 森達也
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2002/01
- メディア: 文庫
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この本で何度も「思考停止」というキーワードが出てくる。思考停止と言ってしまうとどうしてもネガティヴな感じしか受けないが、それはつまりものを考える手間、みたいなものを節約しているということであり、単に悪いものではないはずだ。でないと日常生活に支障が出まくりなわけで。問題はそれをに対して無自覚であること、思考停止によって効率を得ていると同時に失っているものに対して省みることが無くなること、なんだと思う。
森さんのドキュメンタリーというものに対する信念と現実の諸問題との折り合いについて、かなり葛藤がある様子もずいぶん正直に書かれていて、そういうあたりもなんかこの人はやっぱり信用できるな、という感じを受ける。内容はヘヴィなのだが、けっこう読みふけってしまった。ある種の人々にとっては、オススメの一冊だ。