野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

勘弁してくれよジャック

レヴィナスといえば、その思想の難解なことで知られている。
そしてまたラカンも冗談としか思えない(少なくともこのわたくしにとっては)理解不能な言辞を弄したテクストでもって多くの人々を困惑させ、また絶望に陥れてきたことだろう。
そんな二人の偉大な哲学者の難解極まりない思想を並べて吟味することによって、そこに共通する「わけのわからなさ」から見えてくるものがあるのではないか、という試みがなされたのが、レヴィナスの弟子を自称するウチダ先生による「他者と死者」である。

他者と死者―ラカンによるレヴィナス (文春文庫)

他者と死者―ラカンによるレヴィナス (文春文庫)


なるほど。
とりあえず、あの難解さというのはどうやら、「わざとやっている」らしい、ということがわかった。
とは言っても、世間でよくあるような、中身が無いのをごまかしてなんだか高級なことを言っているように見せかけるとか、何か都合の悪い事実を隠蔽するために、意図的に(とは限らないかもしれないけど結果的に)難解にしている、というのとはちょっと違うようだ。
ではどういう風に違うのか、とわたくしには訊かないでいただきたい。そんなことはこの俺様にはわからない。
そんな訳のわからんことばっかり書いてる本なんか読むのやめたら良い?あるいはそうかもしれない。立花隆さんも、「自分の身の丈に合わない本を無理して読まない方が良い」って言ってたよな確か。
でも、なんか「気になる」のですよ。毎回打ちのめされて、己の知性の不調に失望しながらも、なぜかこの手の本に手を出すのはやめられない。
そこから得るものはゼロではないが、言ってみればザルで水を掬うようなもので、おそろしく効率の悪いやり方だというのはわかっている。けど、結局はもうスタイルの問題であって、何だかんだ言ってこれがいちばん自分にあったやり方なんじゃないかと開き直りつつある今日この頃なんである。