野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

ラフマニノフ最強説

先日、「世界最高のピアニスト」なる本を読んだわけだが、今度は「二十世紀の10大ピアニスト」なんていうのに手を出してみた。


これがまた、新書なのに400ページを超えるという法外にマッシヴな代物なわけだ。
前記の「世界最高〜」は、いろんなピアニストについて、その演奏がいかなるものなのか、ということについて詳述する本であった。一方でこの「二十世紀〜」は、演奏や技術の細かい話についてはあまり触れない。10人のピアニストについて、彼らの生い立ち、神童ないしは天才少年が名ピアニストになっていく過程、そして他のピアニスト達との人間関係について、その時代背景についても考察しながらクロノロジカルに紹介していく、という趣向なんである。同じピアニストネタとは言っても、そのようにアプローチが異なるというのが面白い。
よく言われるように、やはり二十世紀は「戦争の世紀」だったのだな。そんな時代には、音楽もやはり政治とは無関係ではいられない。みんな何かのかたちで戦争と関わり、その活動も影響をうけている。そういやカザルスもフランコ独裁政権に抗議して、演奏活動をストップしていたんだったかな。
それにしても、何もバックハウスやらアラウまでひっぱり出してきて「10大ピアニスト」にしなくても良いんじゃないか。なんかいかにも頭数合わせ、という感じがしてしまうのだが。まあその辺は著者の中川さんご本人も感じておられ、あとがきにそのように書かれている。実際のところ「ルービンシュタインとホロヴィッツ」でも十分面白かったんじゃないかと思うのだな。「松田聖子中森明菜」みたいにね。
いずれにしても、大変な力作であることには違いない。
とりあえず、ホロヴィッツを聴いたことがないのはちょっとマズい気がしてきた。まずは王道でショパンから、かな。