野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

みんなの意見は案外正しい

これまた朝日新聞の書評欄で読んで、ずっと気になっていた一冊である。
「一般意志2.0」というタイトルに、「また2.0かよ」と思ってしまっていたが、いやなかなかスリリングな「知の冒険」という感じで、いいんじゃないだろうか。

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル

一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル


副題に「ルソー、フロイト、グーグル」とある。なんでやねんと思ってしまった人は、高校の社会科(とは言わんな、わたくしの年代であれば「倫理・社会」かな)の成績があまりよろしくなかったはずだ。この俺様のように。
「一般意志」というのは、ルソーの提唱した概念である。すいません、知りませんでした。あるいは、憶えてませんでした。そんな俺様でもわかるように、ちゃんと「一般意志とは何か?」というところからていねいに解説してくれているのがこの本の良いところだと思うが、よく知っている人にとってはちょっとダルいかな?まあいいや。
「一般意志」というのは、まあ平たくいえば「みんなの意見」いや、単なる多数決ではない、「正しい」意志である。だから、これは仮想的なもので、それにアクセスできる手段はなかった。政治的決定はこの一般意志に基づいて行うのが良い、ってそれを導き出す具体的な方法も示さずに、ルソーもずいぶん無責任なことを言うもんだなと思うが、まあルソーってのもずいぶん変なヤツだったらしいから。
とりあえずルソーが変なヤツってのはおいとくとして、さて現代に立ち戻って考えてみたときに、この「一般意志」って実はオレら手に入れることができるんでないの?というのがこの本の主張である。それはつまり、日々とてつもない数が送信されてくるGoogleへの検索クエリや、何億というユーザーによるTwitter上のつぶやきの集積である、というのだ。
よくもまあ、こんな途方もないことを思いつくものだ。Web2.0とかなんとか言われていたころに、UGCなんていうのもその可能性も云々されていたと思う。でもこれといった有効な使い途ってあまり考えられてなかったような気がする。「クラウド化する世界」に書かれていたような、どちらかというと悲観的な見方というのはあったと思うけど。
この本に書かれていることがどれほど正しいのか、そして現実的なのかはわからない。そもそも著者本人が「夢である」と言っている。でもとりあえず、「こんなことを思いついてしまう」ってこと自体が、おもしろいじゃないの。