野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

やっぱりあの眉毛にはかなわない

「ビジネスモデル・イノベーション」というのを読んでみまして。


最近の日本企業は、欧米流の経営手法や思想に過度に流され、すっかり元気がなくなってしまった。一方で、単に収益を強欲に追求して行くという企業の価値観もリーマンショック以降は、それはちょっと違うんでないの、となってきている。社会や、世界の人々にとっての「共通善」が重視されてきている。ここはひとつ、日本企業が本来持っていた美点、日本の良き価値観と暗黙知をベースに創造される高質な知を価値に変えるプロセスを実践していこうぜ、てな話でございましょうか。
収益性と社会性の二律背反ではなく、これらを高次元でバランスさせるのが「賢慮」である。この価値観をベースにした「賢慮の戦略」の具現化はつまり、本質的に真善美を追求する「知」を「価値」に変えるダイナミックプロセスを実践することであると。なるほどねぇ。
「価値命題の刷新」、すなわちまったく新しい価値命題を創造すること、あるいは現在のビジネス追求している価値命題を再定義すること、これがビジネスモデル・イノベーションである、と。すごく乱暴に言えばそういうことですか。
ところで「知識創造のプロセス」みたいな話は、まあだいたい野中せんせの他の本でも書かれている内容で、んでこの本も例によって色んな人が書いたものをまとめているので、章ごとにレベルにばらつき感がある。それにしてもいったいどういう読者を想定しているのか知らんが、いきなり「SECIモデル」なんていう言葉を説明もなしに使うのはどうかと思うな。みんな野中せんせの論文やら読んでいるという前提なの?別に良いけどさ。
この本で一番(そして意外に)面白かったのは、カルロス・ゴーンと野中せんせの対談ですな。ゴーンって、どうも好きになれなかったけど、これを読むと、うーん何だかんだ言ってやっぱすげえなゴーン、と思うね。最後の方、調子に乗って一人で延々4ページにもわたってしゃべり続けてるのもまたご愛嬌。