野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

ボストンの仇を大阪で討つ

大阪市立美術館で、「ボストン美術館 日本美術の至宝」という特別展をやっている。ずっと懸案になっていたのだが、どうも天王寺まで行くのがなんとなく面倒で(普段は堺まで通勤してるくせに)先延ばししているうちに、会期はのこり一週間ほどとなってしまった。ということで本日やっと重い腰を上げて行ってきたわけですよ。
ボストン美術館には昨年の6月にアメリカ出張の際にドサクサにまぎれて行ったのだが、残念ながらその時ちょうど日本美術のコレクションが出払っていて(つまり今回のような展覧会のため)、観ることができなかった。そのうちリベンジしてやるぞこのやろうと思っていたわけで、これで悲願達成だ(大げさだって)。
すでに行った人の情報によれば、平日でもかなりの混み具合、とのこと。午前中とはいえ日曜日だから、そりゃもう大変だろうと覚悟を決めていた。いや実際のところ、ほんとすごい人でした。それにしても不思議なもので、ゲロ混みの展覧会で京都市立美術館みたいに「立ち止まらないでください!」なんて言われると、美術館でお前なに抜かしてけつかんねんふざけんなコラ、と思ってしまうが、この大市立美術館みたいに「ゆっくりと前へお進みください」と言われれば、さほど腹も立たない、というね。言ってることはほとんど同じなのに。
さて今回のコレクション、かなり見応えありでございましたな。仏画も山水画も屏風絵も、みんな素晴らしい。特に今回のウリとなっている曾我蕭白、これがまたなかなかすごい。山水画のあのタッチは、正直なところあまり好みではないのだけど、なんだか独特の迫力で、妙に引きつけられるものがある。雲竜図のスケールと迫力に圧倒される一方で、なんだかしりあがり寿みたいなちょっととぼけたテイストの画がまたたまらなく良いし、本日の一枚としてポストカードを買った虎渓三笑図屏風(廬山に隠棲した東晋[とうしん]の僧慧遠[えおん]のもとを訪れた陶淵明[とうえんめい]と陸修静[りくしゅうせい]。話に夢中になった慧遠が俗世に通ずるとして渡らぬと決めた橋を越えたことに気付いて3人で大笑した場面が描かれる。)とか、玄宗皇帝の船遊びに呼び出されたのだけど、酔っ払っていて船に乗れない李白を描いた酔李白図屏風、とか、川で洗濯する若い女性の脚に見とれて神通力を失った久米仙人とか、そういう微妙にダメな人たちがテーマになっているというのが、なんとも楽しいではないですか。
f:id:neubauten:20130610000627j:plain
でもまあやっぱり、できればあんな人ごみの中ではなくて、広々としてボストン美術館でゆっくりと鑑賞したいもんですなあ。