先月のファッションカンタータは、ファッションショー的なものを生で 観る初めての機会だった。モデルたちの独特の歩き方には少しばかり驚かされた。なぜあのような歩き方をするのか?そして、どうすればあのような歩き方になるのか?実に興味深い。
それと前後するように、鬼才・菊地成孔氏の「服は何故音楽を必要とするのか?」が文庫化された。これは読んでみなければなりますまい。
服は何故音楽を必要とするのか? ---「ウォーキング・ミュージック」という存在しないジャンルに召還された音楽たちについての考察 (河出文庫)
- 作者: 菊地成孔
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2012/12/05
- メディア: 文庫
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モデルたちが着て出てくる服、だけではなく、プラス様々な演出と音楽によって作り上げられるファッションショー。服ではなくその音楽との組み合わせ、ファッションショーそのものの批評という、もともとは「ファッション・ニュース」なる雑誌の連載で行われていた、ある種の実験らしい。
今までほとんどファッションショーというものを見たことがなかったので知らなかったのだが、モデル達は決してショーの音楽に合わせては歩かないのだそうだ(音楽にきっちり合わせると、それは行進のようになり、まことに滑稽な光景らしい)。音楽を無視してウォーキングする。その時に発生するズレこそがエレガンスの源泉とか…?
いやまったく、相変わらず菊地さんらしい、というかこれが実は菊地さんが文章を書いた初仕事?とにかく、独特の狂騒的なグルーヴとそれに歯止めをかけるかのようなポリリズム的うねり、というある種のアンビヴァレンス。それはまさに彼の音楽そのまま、という感じでもある。
ちなみにタイトルにある問い、「服は何故音楽を必要とするのか?」は結局、最後まで答えられることはない。なんともミスティフィカシオンですね。