野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

お盆特別企画

実家に置いてある古い本、わたくしが中学生や高校生のころに読んでいた本だが、これらをあれこれひっぱり出して、実に30年ぶりぐらいに「おれに関する噂」を読んだ。筒井康隆さんの本は中学生のころに、当時出ていたものはほぼすべて読んだと思うが、初めて読んだのはこれだったような気がする。

おれに関する噂 (新潮文庫 つ 4-5)

おれに関する噂 (新潮文庫 つ 4-5)


21世紀のこの時代にあらためて読んでみると、内容的には古い部分が散見されるが(当たり前だ)、表題作の「おれに関する噂」なんかは、また独特の味わいがある。日常の中のちょっと変、というか微妙にズレた部分が段々とエスカレートして行き、カタストロフィが訪れる、あるいはちょっと渋い感じのオチがつく。「怪奇たたみ男」の、ないがしろにされてきた古い畳に関する詳細な記述に気分が悪くなり、一方で着々と顔面が畳化(?)するプロセスは読んでいてなんとなく心休まる。「心臓に悪い」のラスト6行の落差もすごい。落語的なダイナミズムも感じる。とにかく全体的に、いまだにこのグロテスクさとぶっ飛び加減はスゴいなぁ、と唸ってしまう。傑作ですな。