日本史において有名な事件である「本能寺の変」。これで急死した織田信長の後継者は、織田家の宿老たちによる合議で決められたという。織田信長の居城であった清須城で行われたこの会議を、「清須会議」と呼ぶわけですな。そこで繰り広げられる様々な駆け引きを、あの三谷幸喜氏が小説にしてしまったというのだからこれは読んでみないわけにはいかない。
- 作者: 三谷幸喜
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2013/07/26
- メディア: 文庫
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まず、基本的にすべてが登場人物のモノローグで構成されており、しかも現代語訳であるというのが斬新だ。すでに映画化が11月9日公開ということで予定されており、キャストも決まっているため、読んでいて思い切りビジュアルが立ち上がってしまうのがちと難儀と言えなくもないが、いやこの三谷作品に限って言えばむしろそのほうがより楽しめるのではないかという気もしたり。
世間一般のイメージどおり、あれこれと猿知恵をめぐらして画策し自分の思うように物事を進めて行こうとする羽柴秀吉、信長への忠誠心は誰にも負けず、また勇猛な武将なのだがそのぶん単純でだまされやすい柴田勝家、沈着冷静で議長をつとめ、勝家の味方のはずなのになぜか秀吉に丸め込まれてしまう丹羽長秀、などのキャラクターが実にカラフルにかつ妙にリアルに描かれていてとても面白い。特筆すべきはやはり織田信雄のバカ殿ぶりか。これが現代語訳であるがゆえによけい際立つのだな。これまたぜひ映画も観てみたいという傑作でございますな。