野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

強欲な金貸し、または父親殺し

秋の夜長は読書とブログ」なわけで、ブクレコなんかにレビューを書くと、東野圭吾ネタは反響が大きい。さすがは人気作家。これも読んでみなはれ、とさる人が貸して下さったのが「白夜行」。800ページを超える大作であるが、なぜか一冊。文庫だからまだ良いけど、こんなの単行本だと持ち歩きに困るんじゃないか?

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)


物語の最初に「松本清張の新作」とか「イタイイタイ病」なんていう言葉が出てくる。それぐらいに昔の、そして、場所は近鉄布施駅の近くなんていうディープ大阪な場所で起こった質屋殺しの事件から、話は始まる。それに関わる人々についての物語が数珠つなぎ的に出てくるのだが、本来の主役は「リョウ」と「雪穂」だ。しかし、彼らがいったい何を考えていたのかは、最後までわからない。単に邪悪とか冷血とか、そういうことだけでは語るのが難しい。物語の中の色々な謎については、実を言うと最初の100ページあたりですでに「それはこういうことなんちゃうんか」と思っていたのがほぼ当たっていた(これは普段から誉田哲也氏あたりの陰惨な小説ばかり読んで鍛えているおかげかもしれない。実は読んでいて「ヒトリシズカ」を思い出した)。だから純粋にミステリーとして読むと、ちょっともの足りないという人もいるかもしれない。だけど、ネタはほぼ分かっているにもかかわらず、ページをめくる手が止められない、この感じがやっぱりすごいと思う。そんなわけで日曜をほぼ一日つぶして一気読み。まあそういう読み方をしたい一冊ですな。