野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

噛み切れない想い、改め。

「大事なものは見えにくい」。タイトルがよろしうございますな。

鷲田せんせのテクストにしては比較的読みやすい。たぶん新聞に載せたものが多いからだろう。これといった特定のテーマがあるわけではない。まあいわゆるところのエッセイですから。でも、なんともいえない味わいがある。なんだかこう、はっきりしないもの、すぱっと割り切るとそこからこぼれ落ちていくもの。そういう諸々についてぐだぐだ思いをめぐらすことの大切さ、そういうものが伝わってくる気がする。

不祥事が起こればすぐに「犯人」を捜しだし、弾劾をはじめるひとびと。「報道」という名のイメージの送信に、思考を介さず直情的に反応してしまう視聴者たち……。含みや奥行きや弾力が、この社会からもぐっと失せてきた。
社会が強ばってきたときに、わたしたち一人一人にいちばん必要なもの。それは、窮地に陥っても、伏せ、かわし、いなし、反りかえり、踏みこたえ、うっちゃるという「しなり」の技だ。(p.42)

なんていうあたり、しみじみ同意しますよ。なんかいかにも鷲田せんせらしいですな。