野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

いまそこにある危機

「資本主義の終焉と歴史の危機」なんて、まあずいぶん堅いタイトルだこと。

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

資本主義の終焉と歴史の危機 (集英社新書)

中心と周辺があって、周辺から資本を「蒐集」するのが資本主義の本質である、という。資本主義は必ず「周辺」を必要とするのだ。過去何世紀かにわたって西欧諸国は周辺からの蒐集を続けてきて、そろそろ周辺が無くなってきた。中国も賞味期限が切れつつある今、地理的に残された周辺はアフリカぐらいだろう。これであと10年ぐらいは延命できるかも知れないが、そのあとは?
地理的・物的空間を拡大するかわりに電子・金融空間で周辺を作り出し、金融帝国となったアメリカは、ITバブルや住宅バブルを発生させてきた。“資本主義とは内在的に「過剰・飽満・過多」を有するシステム”(p.95)であるという。そして、“バブルとは、資本主義の限界と矛盾とを覆い隠すために、引き起こされるもの”(p.112)だとも。
そしてこの中心と周辺を組み替えるプロセスがすなわちグローバル化である。富める先進国という「中心」は貧しい発展途上国という「周辺」から利潤を得てその結果、国境を超えて1%の富裕層と99%の貧困層ができる。なんともはや。
マクロ的には、そろそろ成長は限界に来ている。そう指摘すると、そんな無責任なことを言うなと叱責されるのだが実際そうなのだから仕方ない。無理に「成長戦略」などをひねり出そうとするのではなく、ゼロ成長の世界で、どうすれば機嫌良く生きて行くことができるか、を考えるべきだと思うのだけど、なかなかそんなことを真剣に考えてくれる人はいない。この本だって、その答えを提示してくれているわけではない。さてどうしたもんでしょう。