「頭の中身が漏れ出る日々」で一瞬にしてわたくしを虜にした北大路公子さんの「枕もとに靴」が文庫になった。そりゃ読まないと。
- 作者: 北大路公子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2014/03/28
- メディア: 文庫
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で、本当に、徹頭徹尾どうでもよい話ばかりであり、その何の役にも立たなさの純度は極めて高い。加えて、そこかしこにホラ話が散りばめられている。著者いわく、「呼吸をするようにウソをつく」とのことだが、まさにその通りだと思う。特に後半では、「凍り玉」、「河童の巣開き」、「春洗い」、「雨宿り室」、「夜祭り」、「過去読み」、「夏送り」、「かつぎ屋」というような、酔っ払いの妄想と現実のあわいにぽっかりと湧いて出たような、妙にリアリティのあるホラ話が次々と繰り出される。これらはもはやファンタジーと言っても良いレベルで、ちょっとテイスト的には「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」(の「世界の終わり」の方ね)みたいな話が、「夢十夜」のような雰囲気で語られる。これらが秀逸なんである。こんなにクオリティの高いホラ話を作れるなんて、実にもう尊敬の念を禁じ得ないのである。