野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

そもそもペット同伴お断りじゃないのか

「バーボン・ストリート」「チェーン・スモーキング」に続く沢木耕太郎のエッセイ集「ポーカー・フェース」が文庫化。
ってんで買ってきましたよさっそく。

ポーカー・フェース (新潮文庫)

ポーカー・フェース (新潮文庫)

むかしTVでウィントン・マルサリスが、ジャズの演奏をショッピングセンターのハムスターに喩えていた。最初はまずみんなが、普通にテーマを演奏する。その後それぞれインプロヴィゼーションを披露し、最後にまたテーマに戻ってきて、おしまい。それを、カゴに入れたハムスターを連れてショッピングセンターに行き、ハムスターがカゴから逃げ出してショッピングセンター中を走り回る。最後にやっと捕まえてカゴに戻す。というふうに説明していた。なんだかあまりうまい喩えじゃないなぁ、というか、なんでハムスターを連れてショッピングセンターへ行くの?と思ったので妙に記憶に残っているのだ。
さてこの「ポーカー・フェース」。とあるテーマで話が始まる。途中から話があらぬ方向へ逸れて行く。いや、それがまた色々と面白い話なのだけど、そもそもいったい何の話をしていたのだか忘れたころに、ふっと戻ってくる。そう、ショッピングセンターを走り回っていたハムスターがカゴに戻ってくるのだ。そのショッピングセンターはとても広大で楽しく、時間を忘れてしまいそうなのだけど、ふと気付くと、カゴに収まっている、そんな感じ。
飲んだくれのダメ人間や菓子パンを主食とする社会生活不適合者のエッセイも好きだけど、やっぱりこういうのも良いですな。、ほどよくスタイリッシュな雰囲気で、端正だけど堅すぎない文章。確立したポリシーとスタイルがあるのだけど、押し付けがましくない。
気心のしれた友人と、酒なんか飲みながらとりとめの無い話をしているような楽しさだ。これぞまさに、珠玉のエッセイ集というやつでございましょう。