野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

柳の下はドジョウだらけさ

最近どうも、古本屋とかバリスタとか和菓子屋とか時計の修理屋とかそういった連中がアームチェア・ディテクティブ的にちょっとした謎解きをする、というような小説が巷に溢れかえっていて、正直なところ少しばかりうんざりしている。
そこにまた一冊、「タルト・タタンの夢」。今度はビストロのシェフってか。なんだかなぁもう。

とか言いながらもやっぱり手を出してしまうわけですな。んでまぁその、一気読みです。だいたいこんな話かな、と想像していた通りだったけど、面白かったです。
やっぱりねえ、なんだか美味しそうなものが色々と出てくる小説には弱いのですよあたしは。
謎解きをするのは、フランスで修業をした、ちょいワル親父(これもなんだか微妙に恥ずかしい言葉になりつつある気がするなあ)風で無愛想な三船シェフ。語るのはギャルソンの高築くん。スー・シェフの志村さんにソムリエの金子さん、という4人でやっている、商店街のビストロ、てな設定だけど、まあほんと料理が美味しそうよねえ。
ちなみに三船シェフが謎解きをするときの必須アイテムはヴァン・ショー。要はホットワインみたいなもんだ。キーとなる人物に「まあこれでも一杯」と飲ませて、「あーなんだかほっとする」と油断したところで重要な証言を引き出す、というやり口だ。刑事ドラマなんかで、取り調べ中のかたくなな容疑者に対して、コワモテの刑事がさんざん責め立てた後に温厚な刑事が「腹減ってないか」とか言ってカツ丼を食わせるみたいなもんかな。
続編にそのものずばりの「ヴァン・ショーをあなたに」というのもあるらしい。こちらも文庫化希望。