野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

バーゼルってそんなとこだったのか

ルソーと言えば「社会契約論」。ジャン=ジャック・ルソー
ではなくて、画家のアンリ・ルソー。うーん、名前を聞いたことあるような気もするけど… という程度。「楽園のカンヴァス」は、アンリ・ルソーの有名な作品(ってこの本で初めて知ったし、見たことないのだけど)「夢」を題材にしたミステリー。

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

楽園のカンヴァス (新潮文庫)

いや、誰も殺されたりしないけども、これはよくできたミステリーだと思う。アートの世界も美しいばかりでなく、欲と陰謀が渦巻いていたりするわけですね。MoMAのキュレーターと日本人女性の美術研究者がスイスのバーゼルに呼びつけられ、ルソーの幻の作品「夢をみた」の鑑定をさせられる、なんていう、それだけ聞いたら何のこっちゃという話だけど。作者の原田マハさんは、実際にMoMAで勤務していたこともあるホンマもんの人なので、アート業界の裏事情的な部分もけっこうリアリティがあったりして、へええなるほど、と思ったり。
物語の中に入れ子になっている、ルソーに関する史実を含んだもう一つの物語がまた、物悲しくもキュートなのだな。ええ本でした。