野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

可愛いふりしてあの子わりとやるもんだねと

先日、「ジョーカー・ゲーム」の映画を観に行ったときに、上映前の宣伝で「イニシエーション・ラブ」の予告をやっていた。
最初は「何じゃいこの安手のラブストーリーは?」と思っていたら、実はこれ、強烈なひとひねりというかどんでん返しというかあっと驚く仕掛けが隠されているらしい。でちょっと気になるなあと思っていたら、この映画には原作があり、書店へ行くとその原作本が平積みで大フィーチャーされている。そりゃ読まんわけにはいかんでしょう。
イニシエーション・ラブ (文春文庫)

イニシエーション・ラブ (文春文庫)

 
静岡の大学に通う「僕」こと鈴木くんが、ドタキャンで人数不足になった合コンの人数合わせとして参加し、繭子と知り合って… という話だ。はっきり言って安モンのラブストーリーだ。いや、それなりに面白いけど。でオビに書かれている通り最後の2行で世界が変わる。いやこれには参った。
歌野晶午の「葉桜の季節に君を想うということ」という小説がある。あれには度肝を抜かれたが、あれに負けないぐらいのしてやられた感だ。実はどうやって落とすのかあれこれ考えながら読んでいたのだが、これはちょっと思いつかなかった。ネタがわかった状態で読み直せば、あちこちに色んなネタが仕掛けられているのがわかると思うのだが(だから「二度読み必至」なのだ)、いやなかなかそこまでは。自分が小説を読むときに、いかに細部を適当に読み流しているかを痛感させられる。
ちなみに時代背景は80年代で、ドラマで「男女7人夏物語」をやっていたころ(このドラマがまた重要なキーになる)で、各章のタイトルが、その当時に流行っていた歌のタイトルになっているのがおもしろい。そして前半部分、主人公の鈴木君が大学生の時の話がSIDE-A、後半の鈴木君が就職してからの話がSIDE-Bとなっている。そうですね当時はカセットテープが主流でしたから。実は解説にも書いてあるとおり、この構成がまたポイントなのだな。いやまったくしてやられたぜ。女ってのは怖いね。