野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

イヤミスざます

以前に読んだことのある「アミダサマ」が異様に怖い、というかグロテスクで妙に印象に残っており、他にも沼田まほかるさんの小説を読んでみたいなと思っていたのを、書店で思い出した。その場でどんな作品があったか検索してみたら、まず「九月が永遠に続けば」というのがヒットした。ほう新潮文庫ね、と思って目の前を見たらそこはまさに新潮文庫のコーナーで、おまけに「な」行の作家のあたりに立っていた。うーむ、購入時からすでに、微妙なホラー風味が。

九月が永遠に続けば (新潮文庫)

九月が永遠に続けば (新潮文庫)

8年前に夫と離婚した「私」と暮らす高校生の一人息子が、失踪した。愛人が駅で事故死した。「私」のまわりで異様なことばかり起こる。けれども超常現象とかオカルト的な話というのは一切出てこない。ホラーというよりミステリーというべきだ。なのに何なのだろうこのホラーな感じは。「私」佐知子が元夫で精神科医の雄一郎と別れる原因となった、患者の亜沙実にまつわるおぞましい過去とか、亜沙実の娘である冬子の不可解な言動。そしてこれらについての語り口。そういったものがこの話をグロテスクに、ホラー風味にしているのだろう。読後にイヤな後味が残るミステリーのことを「イヤミス」と呼ぶのだと先ほど初めて知った。なるほど、これこそ「イヤミス」だ。
でもやはりイヤさ加減で言えば「アミダサマ」の方が上だったな。