野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

中二病のこじらせ方

世間ではけっこう人気の高い作家なのに、その作品をまったく読んだことがない。というのは時々あるもので。例えば湊かなえなんていうのはそのうちのひとつだ。
なんといっても「イヤミスの女王」だし、やっぱり読んでおかなければならない気がするので、とりあえずデビュー作の「告白」を。
告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

告白 (双葉文庫) (双葉文庫 み 21-1)

 
なんというか、衝撃的ですね。第1章だけでじゅうぶん強烈でかつ完結しているように見えたので、あれこれって短篇集だったの?と思ったらそうではない。次々と、語り手を変えながら、おぞましさを増しつつ物語は進み、高校教師の娘が生徒に殺された、という異様な事件の真相に迫っていく。
この小説はまた、「母親」の物語でもある。被害者の母親、二人の加害者の母親、加害者の同級生の母親。それぞれの母親の置かれた環境と立場で持つに至った信念と正義。時にそれは狂気にも近く、時間をかけて子供たちを蝕んでいく。その「成果」を集めた結果、異様な惨劇が起こった、というような。良くできた物語には「父親殺し」が内包されているというが、これは母親殺しの物語だ。いや、(メタファーとしての)父親殺しに失敗するとこうなる、ということなのかもしれないな。
そして衝撃のラスト。いやーまいった。