野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

東京って坂が多いのよ

「アースダイバー」を読み直してみた。

 

アースダイバー

アースダイバー

 

 

やっぱり良いなあ。まず、今ある東京の姿について、「なぜそうなっているのか」を、地形を元に縄文期にまで遡って考える。というコンセプト自体が斬新だ。それに加えて、やっぱりこの中沢さんの文章の自由さと、知的な中にもそこはかとなく感じられる色気、みたいなものが魅力で、この本の導入部からぐいぐい引き込まれていく。縄文海進期に、海に突き出していた岬の突端は、異界との出入り口として特別な意味を持つ。そこには神社や墳墓が多く建てられている。またそのころ海面下にあった場所は、後に湿地帯として独自の「湿った文化」を持ったり、あるいはそのまま池や川になったりしている。こんな話を読むと、不思議な胸騒ぎと静かな興奮を覚える。

ただやはり、本当にこの本を楽しむには、ある程度は東京の地理と、それぞれ地域の雰囲気みたいなものに通じている必要があると思う。だから今回は、この本を片手に、実際に新宿や明治神宮湯島あたりを歩き回ってみたわけだ。やはり、そうやって自分が立つ地面の高低差を体感すると、このテクストの魅力というのをよりいっそう感じられる。残念ながら、限られた時間で歩き回れるのは、本書で触れられている場所の一部にすぎない。残りは、次回以降のお楽しみだな。