野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

Va bene?

「最後はなぜかうまくいくイタリア人」なんてもう、タイトルだけで面白そうな本を貸してもらったので、正月は平和にぷぷぷと笑いながらこれを読んで過ごした。

最後はなぜかうまくいくイタリア人

最後はなぜかうまくいくイタリア人


村上春樹さんのエッセイ「遠い太鼓」はわたくしのお気に入りの一冊で、飽きることなく繰り返し読んだものだが、その中でも特に面白いのがイタリア篇だ。そこに登場するのはまさに、この本で語られるイタリア人そのものだ。「なぜかうまくいく」っていうけど、実際には破綻寸前で全然うまくいってないやんけ、と最初は思った。けれども、それはあくまで近代の資本主義社会における価値観に照らすとさっぱりワヤ、というだけのことで、ごく身近な範囲で物事を考えれば、日々を機嫌よく過ごすにはイタリア人的な発想とか行動原理というのは実にリーズナブルなんじゃないか。
そう、イタリア人のスコープは、時間的にも空間的にも非常に狭く、その中で最適化されているということだろう。明日より先のことを細々と考えたって仕方がない。そんな予想通りに物事が運ぶはずがないのだから。それより、想定外のトラブルが発生しても臨機応変に対応できる方が重要だ。プロアクティブよりアダプティブの方が良い。大事なことはギリギリまで決めない。ダイナミックバインディングというやつだ。また、家族とか一族郎党はものすごく大事にするが、共同体の規模が州とか国とかいうレベルになってくると、もうリアリティを失ってきて、そんなの知ったこっちゃない。だから猛烈に脱税する。そしてコネは重要だ。
だいたいそんな感じだ。イタリア人ってたまらんな。でもちょっと羨ましくもある。いやー楽しい本でした。