野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

鉄道も航空もタバコも国営だった時代があるのだよ

最近Twitter方面で、「もしも○○がカップ焼きそばの作り方を書いたら」というネタが猖獗を極めている。
http://togetter.com/li/977696
○○の中身は、最初は村上春樹だったのが、やれ江戸川乱歩太宰治司馬遼太郎だと言っているうちに徳大寺有恒とか大藪春彦とか糸井重里(ご本人が降臨)なんて言い出して、しまいにはドストエフスキーやら安倍晋三やらスターリンやら金正恩やら登場してきてもう収集がつかない状態に。
いずれも非常に出来が良いわけだが、ことにその中でも「椎名誠が書いたら」については、ひたすら感心するとともに、懐かしさの一歩手前でこみ上げる苦い思い出。というのは別にないのだけれどもそれはともかく。
あれは多分わたくしが中学生のころ、NHK FMで「さらば国分寺書店のオババ」なるラジオドラマをやっていた。そう、これがまさにわたくしと椎名誠のファーストコンタクト。その文体は当時「昭和軽薄体」なんて呼ばれ(いや実は自分で言い始めたらしい)、「スーパーエッセイ」として「さらば国分寺書店のオババ」は一世を風靡していたのだ。
ああ懐かしい。またあの本を読みたいなと思うがあれは今3500マイル離れたわたくしの実家にある。こういう時はやはりKindleが便利ですな。

国鉄(JRではないのだ)や警察に代表される「制服関係のヒトたち」に対する不満、恨みつらみといったあたりから始まり、国分寺書店のオババの理不尽な仕打ちに憤る。いっそジャーナリズム方面の力を結集し蜂起するか、と息巻いていたところ、パーティーにおける彼らのウニ寿司の食い方にブチ切れ、あっさりと見限って実は制服のヒトたちによって世の中は成り立っているのだなんて言い出して… 今あらためて読んでみたら、ウニを食い損ねてあっさり信条も変わってしまうのかよ、と苦笑しつつツッコミのひとつも入れたくなる。また、制服関係のヒトたちとジャーナリズム関係のヒトたちと、どちらかだけが大事ってもんでもないはずなんだけども二元論的にこっちが良くてこっちはダメ、なんてあまりにも物事の見方が皮相的で何でも単純化しすぎだし、そこはかとなく香るマッチョイズムのフレーバーに少しばかり辟易したりもする。のだけど、まあそういう事はこの際忘れて、この「昭和軽薄体」を楽しみ、ラーメンとギョーザを食べ、ビールを飲んだほうが良いですね。