野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

1000億円て1000円置くんとちゃいまっせ

パナマ文書の一件で「タックスヘイヴン」という単語が有名になった昨今であるが、実は2年ほど前に、そのまんまのタイトルの小説が出ているわけですね。

タックスヘイヴン」、もっと一般的な用語だと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。冗談抜きで「タックスヘヴン」=税金天国、と思い込んでいる人が意外といるようだけど、違いますからね。グリシャムあたりのリーガル・サスペンスを読んでるとよく出てきますわよ。
タイトル通り、金融犯罪がテーマのミステリーで、舞台はケイマン諸島あたりかと思ったらそうではなくてシンガポール。へえ。麻薬の売り上げやサイバー犯罪で稼いだ金はケイマン諸島、殺し屋の報酬はスイス銀行に入金すると相場が決まっているけれども、シンガポールタックスヘイヴンだったとは、恥ずかしながらわたくし知りませんでした。
前記のように、ちょっと後ろ暗いカネはこういうところに持って行くというのはハリウッド映画なんかでもおなじみなわけだが、その具体的な仕組みであったり手順というのはよく知らなかった(当たり前だけど)。それがけっこう詳しく説明されていて、ほほう勉強になります、という感じ。国境を越えてマネーがばんばん動くグローバル資本主義の時代、と言いながらも実際にはけっこう歯止めはあるのですな。実際のところどれだけ有効に機能しているのかはわからんけれども。
さすがにタックスヘイヴンともなると、半沢直樹みたいに5億円の融資の焦げ付きが、てな話とはスケールが違っていて、いきなり1000億円が消えた、で、日本人ファンドマネージャーシンガポールのホテルで転落死した、てなことになる。で銀行と警察と公安と検察とヤクザと政治家が入り乱れて、そりゃもう大変。主役の古波蔵くんのキャラクター造形が少々ベタだなと思わんでもないが、とても読みやすく、また面白い。そんなにスコッチが好きなのにボウモアをロックで飲むのはちょっとな、と思わんでもないが、まあそれも大きなお世話ってもんだ。ここはやはり、シリーズ第1作の「マネーロンダリング」もいずれ読んでみなければなりますまい。