レヴィ=ストロースは、何か社会学や民族学の問題に取り組む前には、カール・マルクスの『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』か『経済学批判』の数ページを読んで気合いを入れていた、と『悲しき熱帯』に書いている(実はよく覚えてないけど… 何度も読んだのに)。
内田樹せんせも、「知性にキックを入れるための本」のオススメとして『ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』を挙げている。
以前に読んだスラヴォイ・ジジェクの『ポストモダンの共産主義』の副題である「はじめは悲劇として、二度めは笑劇として」も、この『ブリュメール』の冒頭にある「すべての偉大な世界史的事実と世界史的人物はいわば二度現れる。一度は偉大な悲劇として、もう一度はみじめな笑劇として」から取っているのだ(ちなみにこのフレーズは、前半部分のオリジナルがヘーゲル、そしてマルクスが「こう付け加えるべきだ」と後半部分を追加した)。
この本は、どう見ても二流の政治家としか思えないルイ・ナボレオン・ボナパルト(ナポレオン3世)がいかにして各方面からの支持を集めてブリュメール18日のクーデターを成功させ、皇帝にまでなってしまったのか、について考察したものだ。
ブリュメール18日のクーデターについてもフランス第二帝政についても、あまりよく(というよりほとんど何も)知らないけれども、上に書いたような人々をインスパイアし続けてきた本なのだし、どうも日本では現在「みじめな笑劇」が進行中なんじゃないかという気がしているので、ぜひこれは読んでおかなければ、と手を出してみたのだ。
ルイ・ボナパルトのブリュメール18日[初版] (平凡社ライブラリー)
- 作者: カール・マルクス
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2015/07/27
- メディア: Kindle版
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まず、先日読んだチャーチルの『第二次世界大戦』と同様、その話の背景となっている事実関係というものをある程度把握しておかないと、いったい何の話をしているのだかさっぱりわからない。マルクスの、皮肉たっぷりのレトリックと翻訳の不自然さ(この翻訳あまり出来が良くないと思うんだけどどうだろう)がそれに輪をかけて理解を難しくしている。そして、大量の訳注(なんと全体の40%近くにも及ぶ!)がつけられているのだが、どういうわけかこいつが本文からリンクされていない(電子書籍なのに!)ため、クソの役にも立たないのだ。結構カッコ良い文章なのだけど、とにかく意味がわからないので、読むのが苦痛で仕方なかった。
というわけで、この何とも言えない敗北感。まことに残念で仕方がない。