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野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

シウマイ食べたい

やたらと食べ物の美味しそうな小説、というのは世の中に数多あるわけだけれども、その中でも『あつあつを召し上がれ』というのはかなりのものなんじゃなかろうか。

あつあつを召し上がれ (新潮文庫)

あつあつを召し上がれ (新潮文庫)

「甘い記憶」とか「苦い思い出」なんていうように、ある種の経験というのは、味覚として記憶されることがある。この本は、誰かのクリティカルな経験に関連付けられた様々の「味」をネタにした短編小説を集めたものだ。極上の美味が常に楽しい思い出と結びついているわけではない。むしろ、「こんなに美味しいのに、とても悲しい」あるいは「つらくてたまらないけど、それはそれとして美味いなこれ」みたいな話になっている。もちろん、「うわ何これ美味しい!」がさらに嬉しい出来事に続いていくなんていう話もあったりする。そういうのも悪くないが、愛人の豚(これが比喩としての豚なのか文字通り豚なのか判然としない)との心中を前にして美食に耽溺する男の話、なんていうのはわたくしの好みだ。
ある体験とそれにまつわる味、という共通のテーマで、軽いひねりも入れつつ、次々と供される物語というのが、良くできたコース料理のようだ。
美味しゅうございました。