野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

天網恢恢疎にして時折漏らす

伊坂幸太郎の小説は表紙のデザインも良いなあ、と思う。文庫化された『首折り男のための協奏曲』を読んだ。

首折り男のための協奏曲 (新潮文庫)

首折り男のための協奏曲 (新潮文庫)

長編小説だと思い込んでいたら、短編集だった。といってもまったく無関係な話が並んでいるわけではない。「首折り男」がどこかで絡んでいる。協奏曲というより変奏曲じゃないのか?いや、「首折り男」のまったく出てこない話もあるな。そのかわりに私立探偵兼空き巣の黒崎とか、時空のずれとかいじめとか。それぞれまったく無関係ではないのだけど、その繋がりは緩い。だから前景化するテーマは入れ替わり立ち替わりという感じで、ああそう考えればやっぱり協奏曲か。
それにしても「首折り男」の出番なんてほとんどないし、いったい何者なのかなんてさっぱりわからない。けれどもその周辺の人々にまつわるちょっと不思議な話や怖い話、これらがそれぞれ無関係なようで、実はあるところで繋がっていたりする。相変わらず書きっぱなしのようでいて実は、というその巧妙さにはもう、感心してしまう。