野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

ミスジ美味いよね

『漁港の肉子ちゃん』ってまた、すごいタイトル。

肉子ちゃんの本当の名前は菊子だけれども、それを知っている人は少ない。かなりのデブで、北陸の寂れた港町に一軒だけある焼肉屋「うをがし」で働いているから、肉子。という、実に身もふたもない名前だ。娘のキクりんと二人でどこからか流れ着いた肉子ちゃんを見た焼肉屋のサスケ爺さんは、彼女は肉の神様に違いない、と思い込み、いつの間にか「うをがし」に住み込みで働くことになっていた。
肉子ちゃんはデブなだけでなく不細工だ。そして服の趣味も悪い。おまけにアホなので、糞みたいな男に騙されてばかりいる。大阪や名古屋で散々な目に遭って流れ着いたのが、北陸の寂れた港町というわけだ。
肉子ちゃんはデブだし不細工だしアホだけど、底抜けに明るくて、とても優しい。キクりんの本名は喜久子。菊子と同じ読みだ。そんなアホな、親子なのに。と思うが、そこが実は結構このお話のポイントだったりもする。
キクりんは小学五年生だけども、ずいぶんしっかりしている。この小説はキクりんが語るという体裁になっており、肉子ちゃんに対するキクりんのツッコミというのが、これまた実に面白かったりするのだ。
後半では種明かし的に肉子ちゃんの過去について語られていく。ほぼ、たぶんこういうことですよね、と推測する通りの話になっている。それでもなお、「おお、そうなのか…」と、じんわり来る感じ。やりますなあ。