野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

いつもより多く回しすぎ

伊丹市立美術館で『しりあがり寿の現代美術 回・転・展』というのをやっている。
しりあがり寿の現代美術 回・転・展 | 伊丹市立美術館
それだけでも面白そうなのだが、さらに2/11はなんと、中沢新一さんとの『スペシャル回転グルグル対談』なんていうイベントまであるんだから、こりゃ行ってみないわけにはいかない。
タイトル通り、いろんなものが回転している。とにかくありとあらゆるものが回転している。縄文人親子の人形とか、ボ・ガンボスの解散コンサートのチケットとか、巨大エビフライとか、雇用証明書(誰の?)とか、勝海舟と西郷どんとか。

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その他、とにかく何でも。ほとんどガラクタにしか見えないのだが、すべて回っている。ひぼすべて時計回りだが、よく見るとごく一部は反時計回り。

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この展覧会は各地を回っているのだが、ここ伊丹では当地のものを、ということで関西スーパーの買い物カゴとかバス停とか。何でやねん。
ゆるめ〜しょん、というのも展示されている。名前の通りユルくてシュールなアニメーション動画だ。ついつい見入ってしまう。これが何種類もあり、じっくり見ていると時間がどれだけあっても足りない。

対談の聴講は定員100名だが、整理券などが出されるわけではない。念のために開演の1時間ほど前から会場前あたりで待機しているとだんだんと人が増え始め、会場予定時間より早くオーディエンスを入れ始めるとあっという間に満席になり、立ち見まで出る勢い。
いよいよしりあがり寿中沢新一のご両名が登場。しりあがり師は写真にあるように長い白髪、ヒゲの扮装で、それに乗っかって中沢せんせも白いヒゲを装着していた。アホなことしとるなあ。しばらく話すうちに「鼻がムズムズする」と取ってしまったが。
対談の内容はと言えば、とにかく「回るもの」の写真とかYouTubeの動画とかを見ながら、回転について語るのだ。イヌイットのヨーヨー。たいまつをぐるぐる回す火まつり。ブルロアラーという、回転させて音を出すアボリジニの民族楽器。大勢がものすごい勢いでぐるぐる走り回りながら神の名を唱える修行を行うスーフィーイスラム教の中でも異端であるらしい)。六道輪廻についての解説が入っている聖闘士星矢の動画(なぜかスペイン語字幕付き)。永久機関
夏至冬至の時期には自然界のバランスが崩れ、死者の霊がやってくる。だからみんなでぐるぐる回りながらご先祖様の霊を取り込み、また一方で餓鬼はちょっと横の方に行っといてもらう。例えばそれが日本の盆踊りだ。
時間が直線的に流れるというのは、一神教的というか西欧的な考え方だが、東洋あるいは仏教においては時間の流れは円環的なのだな。現代の人類は前近代よりも、また文明社会の人々は未開社会よりも知性において優っている、つまり歴史において新しいほうが古いほうより常に優れているというのが、いわば西洋中心主義の論拠なわけだ。しかし、円環的な時間の流れ、循環的な歴史という見方だって、じつはそんなにおかしな話ではないはず。これはまさにレヴィ=ストロースの『野生の思考』のキーメッセージだろう。
まあ中沢せんせもそこまではっきりと言ってたわけじゃないけど、何となくそういうことじゃないかなと思ったわけですよ。
あと、ポケモンGOは、リアルな風景・地形の上に情報を付加し重ね合わせて、その意味を拡張していくという点で、実はアースダイバーと同じだ。という指摘は、ちょっと衝撃的だった。なるほど。個人的にはポケモンGOには興味ないけど、アースダイバーのアプリを誰か作ってくれたら、これはちょっと、ヤラれてしまうかもしれんなぁ。
てな感じで、いやーかなり面白かった。
売店で『おとぎの国のメメントモリ』と『火あぶりにされたサンタクロース』を買ったので、サインしてもらうこともできたのだけど、軽く70人ほどは行列しそうだったので、あっさり諦めて帰ってしまった。せっかく伊丹まで行ったんだから、地酒ぐらい買っときゃ良かったな。