野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

順番がわかりにくいのよ

『螻蛄』を「けら」と読むなんて、フリガナがないとちょっと無理だろ。
なんでもそういう昆虫がいるらしい。そして、一文無しのことを俗にこう言うのだとか。そうか、「おケラ」ってここから来てるのか。
怪しい建設コンサルタントの二宮とイケイケヤクザの桑原、の名コンビがあれこれやらかす『疫病神』シリーズ、第2弾だと思って読んだけど、どうやらその間にも『国境』とか『暗礁』なんてのがあるようで。しまったな、と思ったが、まあ仕方ない。順番はさほど重要ではないだろう、たぶん。

螻蛄―シリーズ疫病神―(新潮文庫)

螻蛄―シリーズ疫病神―(新潮文庫)

経済ヤクザの桑原さんがらみのネタなんて、一見でかい儲け話のようだけど、関わったら絶対ロクなことにならない。というのは二宮くんも重々承知していながらも、なぜか巻き込まれてしまうというその成り行きが面白いわけでね。
あとやっぱり、えげつなくリアルな大阪弁の会話ね。このドライブ感がすごい。特に、二宮くんに対する桑原さんの皮肉、あてこすりからダイレクトな罵倒まで、そのバリエーションの広さとボキャブラリーには圧倒される。
そして二宮くん、生臭坊主や周辺のスジもんを相手に大活躍で、今回もまた満身創痍。喧嘩は弱いが実は打たれ強い。なかなかタフで図太い男なのだ。時にイケイケヤクザの桑原さんも呆れるぐらいに。
という感じで、面白い小説なのですよこれ。次はちゃんと『国境』を読まないとね。