野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

14番でビビらせて8番でヘタを打つ

『さよならドビュッシー』は、ユルい感じのタイトルのわりになかなか凄惨なお話だったと記憶している。主役ではないけれどもあの物語の中で重要な役割を演じたのが岬洋介。どうやら中山七里作品の中には彼を主役にしたシリーズがあるらしい。
でこの『どこかでベートーヴェン』というのがその岬洋介シリーズのうちのひとつ、というか、いわば「岬洋介ライジング」という感じで、彼の高校時代の逸話を同級生の鷹村亮くんが語る、という体裁になっている。

どこかでベートーヴェン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

どこかでベートーヴェン (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

若き日の岬洋介が切れ味鋭い推理により、彼が通う高校で豪雨による災害の中で起こった殺人事件を解決する、てな話になっている。
なんというかもう、岬洋介の出木杉くんぶりにはちょっとばかしうんざり。そう、まるで千里眼シリーズの岬美由紀のようにね。あいつらひょっとして兄妹ちゃうんか(んなこたぁないか)。いやでもね、なかなか面白い話なんですよ。
それにしても冒頭では、なんか知らんが岬洋介が人々をテロから守った、みたいなニュースから始まるんだけども、その詳しい内容については一切触れられない。これってつまり、そういう話がまた別にある、てことなのか。つまり岬洋介シリーズ。やれやれ。
ちなみにボーナストラックでの主役は検事やってる岬洋介の父親なんだけども、そこに弁護士として御子柴礼司の名前が出てくる。あ、それは『贖罪のソナタ』。あの小説ではピアノソナタ23番が出てくる必然性がまったく理解できなかったことを思い出した。