野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

相変わらず栗焼酎ですか

銀翼のイカロス』がついに文庫化された。

銀翼のイカロス (文春文庫)

銀翼のイカロス (文春文庫)

 

半沢直樹シリーズは、不良債権の回収から企業買収へと、だんだん話がデカくなってくるなあ、と思っていると今度は企業再生と債権放棄を巡って政治家とケンカする、てなことになっている。えらいことでっせ。相変わらず悪役は徹底的に邪悪に描かれており、何だかやたら味付けの濃い料理のようで、ちょっとげんなりしなくもない。が、やはりその分、例によって半沢が倍返しでいてコマしたときのカタルシスはあるのよな。何だかんだ言って、やっぱり面白い。
この小説が連載されていたのはちょうど『半沢直樹』をドラマでやっていた頃のようで、ラブりんこと片岡愛之助による黒崎検査官が大反響だったことから、もともとその予定ではなかった黒崎を本作でも登場させるというファンサービスも心憎い。
ところで本作に出てくる、経営再建中の帝国航空ってのは明らかに日本航空のことだろう。現実には日本航空企業再生支援機構の出資を受け、金融機関には5000億円以上もの債権放棄をさせて再建したわけだが、本作では東京中央銀行は(というか半沢は)債権放棄を拒否している。劇中での再生タスクフォースによる債権放棄の要請に対する半沢の反論というのはまた、当時の更生計画に対する作者の異議申し立てでもあるのだろうか。
それにしても、元アナウンサーの居丈高な国土交通大臣・白井亜希子、いったい誰をモデルにしてるんでしょう。他にもいろいろ出てくるけど、政治家が権力を私物化してあれやこれや、なんてのは、こういう小説の中だけの話にしてほしいもんですなあ。