野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

くうねるところにすむところ

寿限無』のあの長い名前の一部に「ごこうのすりきれ」というのがある。漢字で書くと「五劫の擦り切れ」だ。五劫とは何か。三千年に一度、天女が降りてきて、巨大な岩を羽衣でさらっと撫でていくという。そうやってさらっと撫でられた岩が、ついには擦り切れて無くなってしまうプロセスを「劫」という。「五劫の擦り切れ」ってのはつまり、これを5回繰り返す、それぐらいにとてつもなく長いタイムスケールの話なわけだ。
先日発売されて即買いしたもののしばらく手をつけられなかった『凹凸を楽しむ 大阪「高低差」地形散歩 広域編』を読んでいたら、そんな話を思い出した。

凹凸を楽しむ 大阪「高低差」地形散歩 広域編

凹凸を楽しむ 大阪「高低差」地形散歩 広域編

箕面の滝は、最初は今より2kmほど前にあったのだが、比較的柔らかい地質の部分であったため流れ落ちる水によって少しづつ削られて後退していったのだとか。その速度は100年で1cm。まあ羽衣で撫でるよりはだいぶ速いかな。
海水面の上昇と低下のサイクルにより、土砂が運び込まれた土地は、ミルフィーユ状の地層が見られる。大阪には海水によって運ばれ、形成されたと思われる地層は13層もあり、もっとも古い海成粘土層は150万年前のものだとか。気の遠くなるような話だ。大阪がだいたい今のような地形になったのは、6000年前の縄文海進期における海面上昇によるものだとか。そこからさらに、人工的なものを含めて土地の形はずいぶんと変わってしまっているのだけど、「高低差」に着目して注意深く観察すれば、今でも大阪の古層の名残がそこかしこに見つけられる、というのがこのシリーズの主旨だ。テレビでは『ブラタモリ』が同様の趣向で、なかなかの人気なようだが残念ながらわたくしはまだ観たことがない。
こういうのはやっぱり、知らない場所より、少しでもなじみのある土地の方が楽しめますな。今回はほぼ北摂全域をカバーされておりなかなか結構なことだった。でも実際に自分で「地形散歩」を楽しもうと思うと、やはりそれなりの、それも広範囲にわたる知識が要るよなー、と思う。
とりあえず「スーパー地形」のiOSアプリ入手しときました。