お盆のころにオンエアされたNHKスペシャルの『戦慄の記録 インパール』というドキュメンタリー番組の反響は相当なものであったらしい。その影響で『インパール』の文庫(中古)に法外な値段が設定されていたようだ。Kindle版は549円だったが。
- 作者: 高木俊朗
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/09/20
- メディア: Kindle版
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で今回あらためて感じたのだけど、どうもわたくしは、テキスト情報から地理関係を把握するということが致命的に苦手であるらしい、ということだ。おまけに、日本陸軍の組織構成がどうなっているのかよく知らずに読むものだから、肩書を見てもそれがどのあたりの地位にいるのか、また登場人物それぞれの関係というのがもひとつ理解できない。というわけで、そういう背景情報も含めた戦況というのがさっぱりわからなくて難儀した。
しかしそれでもなお、この無謀なインパール作戦を遂行していく中で起こっていた出来事というのが、筆舌につくしがたいほどに凄惨なものであったのだということは理解できた。
前線の師団は、英印軍の攻撃よりも、飢餓と伝染病により壊滅状態となった。負傷しても治療する薬などもちろんなく、生きながら患部に蛆が湧き、泥と糞便にまみれながらもなお行軍を強いられた。
「天長節マデニインパールヲ攻略セントス」というのが牟田口司令官による命令だった。そのターゲット設定に合理的な理由などないし、またそれを実現するためのリソースの裏付けもない。やはりいつの時代でも、バカが威張るとロクなことはないのだ、ということで、どうにも暗澹たる気分になる。「2020年の東京オリンピック」が、インパール作戦の再現にならないことを祈る。