野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

宅のテレビはREGZAざますの

技術で優っている日本企業が、事業では欧米や新興国の企業に負けてしまうのはなぜなんだぜ、てなことをよく言われますな。TVとかDVDとか太陽電池とかその他諸々。
このお題に対して『オープン&クローズ戦略』では、様々な製品やシステムが、大きな流れとして従来のハードウェア・リッチ型からソフトウェア・リッチ型に変わってきたこと、てのを挙げている。ソフトウェア・リッチ(「デジタル」っていう方が一般的だと思うけど)になると、技術の伝播スピードが劇的に速くなり、システムのアーキテクチャはモジュラー型になって、ハードウェア・リッチ型におけるすり合わせの技術はほとんど不要になる。そしてモジュールさえ買い集められれば、必要にして十分なレベルの機能・性能を備えた、同じような製品を誰でも比較的簡単に作ることができるようになる。そうするとコスト勝負になった時に、人件費もさることながら例えば減価償却に関わる税制面で有利な台湾企業あたりに勝てるわけがない、と。

オープン&クローズ戦略 日本企業再興の条件 増補改訂版

オープン&クローズ戦略 日本企業再興の条件 増補改訂版

 

というわけで、大事なのは「オープン&クローズ戦略」、つまり
コア技術として自社内に取り込んでおく領域と社外との境界を事前にしっかり設計し、社外とのインターフェイスには知的財産を仕込んだ上で開放する。そして自社のクローズ領域からインターフェースを介して外部のエコシステムをコントロールできる仕組みを作る。
てなことだそうで。実際にこういうのがやっぱり欧米企業は上手くて、その事例としてアップル、インテル、クァルコムあたりの事例が解説されている。
うーむなるほどね、と思うが、これってやっぱり、コア領域の部分に圧倒的な優位性を持ってて初めて成り立つ話なのよね。加えて、その境界の設計だとかエコシステムをコントロールする仕組み(本書では「伸びゆく手」と呼んでいる)を作るってのが、もんのすごく難しい気がする。少なくともわたくしにはできる気がしない。
上記の主張を執拗に、市販されている書籍としてはなかなかお目にかかれないレベルの誤字脱字とともに400ページ以上にわたって繰り返されたので、ずいぶん時間をかけて読み終わった時には疲労困憊だった。しかしまあ小川教授渾身の一冊という感じでもあり、難しいけどもちょっとじっくり考えてみなければなりませんね、とは思う。