野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

いわゆる「よそさん」のことですよね

京都では、昔からそこに住む「地の人」に対して、どこか他の場所から移り住んできた人のことを「入り人(いりびと)」と呼ぶのだそうな。へええ。
で、原田マハの『異邦人』、このタイトルを「いりびと」と読ませる。

異邦人(いりびと) (PHP文芸文庫)

異邦人(いりびと) (PHP文芸文庫)

 

マハさんお得意のアートもの、なのだけども、いよいよ本作ではアートにまつわる狂気とか妄執とか、そういうダークサイドに踏み込んできて、ちょっと今までと違うテイストに。まあベタにいえば、より昼ドラ的ドロドロ要素の配合を強めにしたという側面もあり、そのあたりはおそらく賛否両論分かれるであろうところ。えーそんなドロドロなんイヤ、と眉を顰める人もいるだろうし、なんやドロドロいうても中途半端やのう、と斬って捨てる向きもあろう。あれ?これじゃ賛否両論じゃなくて否ばっかりか。いえ、わたくしは良いと思いますよ。面白く読みました。原田マハ作品に欠かせないダメ男ももちろん登場していて、それはつまり準主役の篁一輝。まあへなちょこのボンなわけですが、これがもうエエ感じにダメでねぇ。
でこの小説はまた、京都という土地の閉鎖性と、そこに育ってきて独自の進化を遂げた美、豊饒な文化、みたいものも見せてくれる。で、わたくしなんぞは読みながら、へええーなんて感心したり驚いたり。やはりアレですよね、文化資本っていうのは社会階層だけでなく、地理的にもロックインされてしまうものなんですねえ。いやあ京都って怖いとこどすなあ。