野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

ディスるつもりは無いんですよ。でもなんだかモヤっとするなあ。

破壊的イノベーション(disruptive innovation)、なんてことをクリステンセンが言い出したのは1990年代半ばごろのこと。disruptionという単語にはもともと分裂とか中断なんていう日本語があてられている。確かに、それまでのゲームのルールをチャラにする、不連続な変化。というイメージを上手いこと表している単語だと思う。「破壊的」という日本語はどちらかというとdisruptionによりもたらされる結果にフォーカスしている、という感じはしますわな。
でクリステンセンの『イノベーションのジレンマ』からかれこれ20年以上が経過している。その間に同書の中で紹介されたケースに類似の事例には事欠かず、さらには破壊的イノベーションによる勝者が、また次の破壊的イノベーションにより消えてゆく、というような事例まで出てくる始末。沙羅双樹の花の色、ですな。
そんな諸行無常の世の中をdigital vortexなんていう言葉で表してみる。そう、デジタルの渦。近づくまではなかなか気づかない。気づくぐらいまで近づいた時にはもう手遅れで、渦に飲み込まれて、あーれー。
そんな時代にサヴァイヴするにはどうすりゃいいのさ、ということで、デジタル・ボルテックスに巻き込まれそうなアナタのための『対デジタル・ディスラプター戦略』ってか。

対デジタル・ディスラプター戦略 既存企業の戦い方

対デジタル・ディスラプター戦略 既存企業の戦い方

クリステンセンがディスラプションについて語り始めた頃よりも、その破壊力はより大きくなり、スピードはいっそう速くなっている。市場にディスラプターが登場すると、そこでの価値を破壊し既存のプレイヤーから利益を分捕り、後にはぺんぺん草一本生えない状態にする。こういうのをバリュー・バンパイヤと呼んだり、またその荒廃しきった市場の隣ぐらいにぽこっと価値の空白地帯が現れる、これをバリュー・ベイカンシーと名付けてみたり。正直なところクリステンセンの理論から本質的な部分はそう大きく変わってない気はするけど、まあこういう目新しい言葉を使うと、「おっ」と思いますわな。で、それに対抗する戦略は、稼げるだけ稼いで店を畳んで逃げるか、辛うじてまだ儲けられそうなところに引っ込むか、バリュー・ベイカンシーを見つけてそこで勝負をかけるか、あるいは、自分もディスラプターになるか。はーなるほどねえ。そしてこういう戦略を実現するのに必要なのが「デジタルビジネス・アジリティ」で、これすなわちIoTやアナリティクスを活用したハイパーアウェアネスと情報に基づく意思決定力、そして迅速な実行力です、と。そりゃまあそうでしょうけどねえ。なんかもう、胡散臭いコンサルに騙されたりしないように、しっかりせねばなりませんなあ。