野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

チャレンジとかバイセルとかキャリーオーバーとか

少し前に読んだ小説『不発弾』には 大手電機メーカーの粉飾決算の話が出てくる。そのメーカーは米国の原発メーカーを買収し、減損処理を巡ってあれこれと難儀するわけだが、まああんなもん誰が見たって東芝のことだって丸わかりなわけで。
で、『東芝の悲劇』は作り話ではなくノンフィクション。

東芝の悲劇 (幻冬舎文庫)

東芝の悲劇 (幻冬舎文庫)

東芝の諸々の不祥事についてはすでに皆様ご案内なのだけど、あの名門企業の凋落がどこから始まったかというと経産省の口車に乗せられて原発メーカーのウェスチングハウスを法外な高値で買ってしまったあたりだ、というのがこの著者の見立てだ。そして、それ以降の経営トップは我の強い暴君か、その暴君が院政を敷くのに都合の良い傀儡ばかりであり、要するに彼らが東芝をダメにしたのだ、というわけだ。その「戦犯」として糾弾されているのが、西室泰三西田厚聰、岡村正、佐々木則夫、田中久雄、室町正志、という歴代社長。特に西室氏についてはその生い立ちから始まって東芝社内で出世していく様子まで事細かに述べられている。
まーだいたい社長なんてやってるのはもともとがちょっと普通じゃない人種なわけだけど、特に東芝みたいな大企業になってくるとそれはもう、百鬼夜行というか何というか。
社内の派閥や抗争なんてのは小説とかドラマの中の話であって、池井戸潤なんかの小説を読んでは、「んな奴おらんやろ」と思っていたものだが、リアルであんなことやってる連中が実在するなんてそりゃもうびっくり仰天だ。
それにしてもアレだな、いま首相秘書官やってる柳瀬とか今井なんていう名前が、当時の経産省の役人として出てきて、あーコイツらこんなところでも、と苦々しく思ったことだった。