『三国志』第9巻。
- 作者: 宮城谷昌光
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/10/10
- メディア: 文庫
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ところで、世間で評価が高いといえば諸葛亮。天才軍師として知られているが、肝心なところでちーとも勝ててないのに一体どこが?とずっと疑問に思っていた。いやいや赤壁の戦いは、とおっしゃる向きもあるかもしれない。ところがあれだって、呉の水軍が魏の大軍に勝った、てな話に諸葛亮はほとんど関係なくて、やった事といえば奸計をめぐらして魯粛を丸め込み周瑜をだまくらかし、ドサクサに紛れて荊州を掠め取る、という火事場泥棒まがいの所業じゃないか。実は宮城谷せんせの見立てもわりとそんな感じで、“とても戦略家とはよべない”(p.138)とか、“諸葛亮の戦略には、解せぬことが多い”(p.143)とか、なかなか手厳しい。挙句には
諸葛亮の旗鼓の才は、袁紹程度とみてよい。優柔不断であり、公孫瓚には強いが曹操には弱い兵略的欠点と似た短所をもっている。はっきりいえば、諸葛亮は春秋時代の管仲のように万能ではなかった。戦国時代の楽毅は寡兵で敵国の首都に直進したが、諸葛亮にはそういう敢勇もない。したがって諸葛亮には天才的な軍師が必要であった、とあえていわねばなるまい。(p.95)
などと散々な言われようだ。ちなみに第一次北伐、街亭の戦いにおいて諸葛亮は、長安を奇襲する、という魏延の献策を却下している。この時だけでなく、魏延の意見はしばしば諸葛亮にスルーされている。魏延が天才的な軍師というわけでもないだろうが、仮にそんなもんがいたとしても、気に入らない奴のいう事は無視する諸葛亮には活用できなかったんでないの?という気がする。もっとも、司馬懿もまた、有能で老練な将軍の張郃を煙たがるあまりに、楽に勝てるところでけっこう苦労してたりなんかして、まあどっちもどっち(諸葛亮と司馬懿は似た者どうし、と宮城谷せんせは見ている)というか、やっぱり相性ってもんはありますよね、というところか。