野生のペタシ (Le pédant sauvage)

Formerly known as 「崩壊する新建築」@はてなダイアリー

司馬懿が一芝居打ったってか

読みかけの『三国志』第11巻と、さらに第12巻も持って出張に。新幹線の中で、さてまずは11巻を読もう、と思ったが見つからない。なんてこった、第11巻を家に忘れてきたか、しかし読みかけの第11巻をすっ飛ばして第12巻を読むわけにもいかない。ううむこの際、背に腹はかえられぬ、というわけでKindleストアで第11巻をダウンロード購入しiPhoneKindleアプリでちまちま読んでいた。ところがあんた、成田空港に着いてチェックインと保安検査を済ませたあたりで、何のことはない普通にバッグの中に第11巻が入っていることに気づいた。まったく何てこった、もうちょっと落ち着けよ俺様、と思ったがまあとにかくちゃんと第11巻を持ってきていてよかった。

さて、英明といわれた曹叡も、若くして崩御してしまう。後嗣の曹芳はまだ幼い。司馬懿と曹爽の二人でこの幼帝を輔弼せよ、というのが曹叡の遺言である。最初はおとなしくそれに従っていた二人だが、やはり周囲には余計なことを吹き込む者が出てくる。二人で王朝の運営をするってのはどうにも効率が悪くていけませんぜ、なんてけしかけられた曹爽によって司馬懿はだんだんと無力化され、挙句に病を理由に引きこもりになってしまう。司馬懿を追い出した曹爽と愉快な仲間たちは朝廷を私物化してやりたい放題、ってもう中国の歴史というのはこのパターンの繰り返しですな。さて実は仮病を使って引きこもっている司馬懿、さすがに見かねて、これはどげんかせんといかん、と思うわけだ。曹爽側も意外と慎重で、司馬懿がえらくおとなしいけどあれはどうも仮病くさい、お前ちょっと様子見てこい、と李勝に偵察させる。しかし司馬懿は一枚上手で、もうよぼよぼに年老いてしまいほぼ死にかけ、みたいに装う。一家でしめしあわせてそんな芝居を打つあたり、司馬懿も相当に人が悪いなと思うのだが、まあとにかく司馬懿の迫真の演技に李勝はころっと騙されてしまう。それですっかり油断しているところにある日突然、曹爽と愉快な仲間たちが恣放の限りを尽くしてきたという罪状について司馬懿が劾奏し、最終的には関係者一同処刑してしまう。まあいわばクーデターですわな。こうやってついに司馬懿魏王朝の実権を握ったわけだ。
もう老人と言って良いはずの司馬懿だが、なかなかやり手だ。その一方で孫権は歳をとるにつれ、だんだんと耄碌してきてまともな判断力を失ってしまった。ただでさえややこしい事になりがちな後継者問題について、孫権が余計なことをするものだから大混乱。そうこうしているうちに孫権もついに歿して、そのあと一悶着ありながらも跡目を継いだのは孫亮だ。
ところで司馬懿が主役のWOWOWのドラマには、地方の小役人でありながら農業についての深い知識と屯田に関する構想を持っていることを司馬懿に見出され、出世していく鄧艾という人物が出てくる。この小説には出てこないのだろうかと思っていたら、この第11巻になってやっと登場した。なんと鄧艾、最後は将軍にまでなって結構な活躍をするのだな。それにしてもあのドラマで、ああやって鄧艾を引き上げて重用していくのを見ていて、司馬懿ってのは農本主義だなと思っていたのだが、この小説にもそのものずばりの指摘があった。うんやっぱりそうだよな。
この第11巻では、魏の大将軍となった司馬懿も死んでしまう。跡を継いだのは長男の司馬師だ。さていよいよ次は最終巻となる第12巻で、いったいどんなふうに話をまとめるのやら。